2023年9月初旬からスタートしたラグビーW杯フランス大会。10月28日に決勝戦が行われ、南アフリカがニュージーランドに12-11で勝利し2大会連続4回目の優勝を果たしました。
先日まで日本を中心にDグループの各試合を予想しつつ感想を言っていたわけですが、決勝トーナメント以降はパタッと止まっています。
日本vsアルゼンチン戦感想。オフェンスは満点、ディフェンスは赤点。解説者「日本のディフェンスが素晴らしい」←え? ホントに?
理由は簡単で、日本が脱落したのと単純にラグビー観戦に飽きたから笑
もともと日本がどこまでやれるか、アルゼンチン、イングランドと同組で決勝トーナメントに進めるかに注目しており、各国の試合を観まくった経緯があります。
その反動か、予選終了後は急速に熱が冷めて結果のみを追う流れにw
ただ、一応決勝だけは観ておくかということでTverでようやく視聴を終えたところです(リアルタイムではない)。
目次
予想はまったくできず。勢いではニュージーランド、でも直近では南アフリカが勝利…
下記の通り僕はこの試合の勝敗をまったく予想できず。
まったくわからん試合。
ラグビーW杯、南アはデクラーク先発 決勝メンバー発表https://t.co/HWxiNHdVOl
— 玉川ジャンキーズ (@Junkiesrugby) October 27, 2023
アイルランドとの大接戦を制し、アルゼンチンをフルボッコにしたニュージーランド。
それに対して南アフリカはフランス戦、イングランド戦と2戦連続1点差で勝ち上がっています。
勢いは間違いなくニュージーランド、しかも今年7月の4カ国対抗戦でも南アフリカに勝利している。
直近2試合の消耗度を含め、諸々を加味すると紙一重でニュージーランド有利か?
でも、大会前の直接対決では南アフリカが勝ってるんだよなぁ……。
などなど。
思いっきり迷走していたことを報告します笑
ニュージーランドの攻撃力と南アフリカのディフェンスの勝負。過去の対戦もだいたいそんな感じ
と言いつつ、この両チームの対戦はだいたいパターンが決まっています。
グランドを縦横無尽に走り、スペースを見つけて味方が次々に顔を出すのがニュージーランドのスタイル。どんな局面からでも攻めに転じる自由度の高さとチーム全員が一つの方向を向く統率力を兼ね備えています。
対する南アフリカは攻撃面は内側の選手は堅実に、スピードのある外側の選手は野生味溢れるランで敵陣に切り込みます。
中でも11番のチェスリン・コルビはすべてのプレーにおいて自主性が許されている印象を受けました。
ディフェンスについてはスピーディな詰めと“面”で出る規律を両立できるのが強み。1人目が飛び出すだけの猪突猛進とはひと味違う組織力を感じます。
そして、両チームの対戦は基本的にニュージーランドの攻撃力vs南アフリカのディフェンスという構図になります。
ニュージーランドは自在にボールを動かす分、広いスペースを必要とします。
南アフリカとしては、このスペースをいかに潰すか、スピーディなプレッシャーでニュージーランドに糞詰まりを起こさせるかがキモになるわけです。
ニュージーランドが持ち前のフィジカルでディフェンスをこじ開けることができればニュージーランド有利。
南アフリカの出足、圧力がニュージーランドのランを上回れば南アフリカ有利。
過去の対戦を振り返ると、ニュージーランドが勝つなら概ね15点差前後、南アフリカが勝つ場合はロースコアの接戦が目立つ。
まさにニュージーランドの攻撃力vs南アフリカのディフェンスの勝負というヤツです。
今回は南アフリカのディフェンスが機能した。そしてデクラークのキックの精度が相変わらず高い
そして今回は南アフリカのディフェンスが機能したパターンでした。
トライはニュージーランドの1本のみ、前半に4本のPGを決めた南アフリカが1点差で逃げ切る超ロースコアの試合となっています。
詰めの早さ、堅実さによってニュージーランドの攻撃力を封じる南アフリカ。
コンタクトの瞬間の“ずらし”で何度か裏に出られるシーンもありましたが、あのディフェンスを採用する限りある程度は仕方ない。むしろSHデクラークの運動量、躊躇のないタックルを筆頭に多少走られても追いつける自信があるのかもしれません。
あと、やっぱりデクラークはキックの精度が高いですよね。
体格差をものともしないタックルやどこにでも顔を出す運動量、ボールを持つと自在に掻き回すランにばかり注目が集まりますが、実はハイパントの正確性が尋常じゃない。
僕自身、デクラークのプレーを現地観戦して一番驚いたのがキックの精度だったりします。
キヤノンイーグルスvsパナソニックワイルドナイツ現地観戦。TMOでキヤノンの流れが止まった。TMOの扱いは真剣に考えたほうがいいよね
今回の試合でも相手に取らせるキック、味方に競らせるキック、敵陣深く蹴り込むキックの使い分けが秀逸でした。
正直、日本のSH、SO陣にこのキックがあればイングランドに肉薄できた&アルゼンチンにあそこまで走れることもなかった気がします。
各国が講じてくる対策を受けてのマイナーチェンジ。ラインを深く取ってスピーディな詰めに対応する
一方、ニュージーランドの微調整もなかなかよかったです。
2022年の4カ国対抗で南アフリカやアルゼンチンに敗れるなど大苦戦したニュージーランドですが、大会中盤からラインを深く引く&素早いパス回しで極力コンタクトを避けることで巻き返しを見せています。
オールブラックスがオーストラリアに圧勝して「ザ・ラグビーチャンピオンシップ2022」優勝。毎回2戦目で立て直してくるところが王者よね。「普通にやれば」勝てる相手だった
申し上げた通りニュージーランド攻略にはスピーディな詰めが有効ですが、あの大会ではさらに深い位置どり+細かいパス回しで急場をしのぎました。
そして、今大会のニュージーランドは2022年を踏襲してこれまでよりラインを深く取る傾向が見られました。
露骨にコンタクトを避けることはありませんが、従来のアンタッチャブルさはやや控えめに。各国の対策を受けてマイナーチェンジを強いられたのだと想像します。
日本のHCにエディー・ジョーンズが復帰? これはちょっとどうなの?
これは余談ですが、2015年大会の日本の快進撃を支えたエディー・ジョーンズがオーストラリアのHCを退任→日本のHCに復帰するのでは? との報道が各所から聞こえてきます。
正直、これはどうなの? と。
真偽自体が不明ですが、ここにきてのエディー・ジョーンズはちょっと違う気が……。
オーストラリアに筋を通すとか、2015年大会後の辞め方がどうとかではなく単純に機を逸しているという意味で。
点を取り合うラグビーが通用しなくなっている気が…。日本との親和性は高そうだけど
エディーの提唱するラグビーは基本的にラン中心の自由度の高いスタイル。伝統的にキックを多用するイングランドもエディーの任期中はそのスタイルを踏襲していました。
ところがラン中心のラグビーは爆発力はあっても安定感に欠けます。
毎試合がギャンブルというか、勝つときは大勝ちする反面負けるときは完膚なきまでにやられる。ムラの多さ、不安定さが随所に見られます。
そして、ご存知の通りエディーが率いたオーストラリアは史上初の予選敗退に沈みました。
その一方でエディーを途中解任したイングランドはアルゼンチンとの一騎打ちを制して3位に食い込んでいます。
先日の日本vsイングランドの展望記事でも「エディー解任後のイングランドは別チームと言っていいくらいスタイルが変わった」と申し上げています。
日本vsイングランド戦展望。厳しい試合になりそう。ロースコアで勝つしかない? 失点を20点以内に抑えて25点くらい取れれば
もっと言うと、上述の通りニュージーランドも従来のアンタッチャブルさを抑えることで各国の組織力に対抗しました。
僕の勝手な印象ですが、現在のラグビーはラン中心の自由度の高いスタイルが規律と組織力の壁に跳ね返されつつあるのかもしれません。
要するに2023年現在、エディーのラグビーは世界的に通用しなくなっている? のかも?
日本のラグビーは素早いパス回し、ボールを左右に散らすスタイルで比較的エディーとの親和性は高そう。
ただ、世界の趨勢を見るとああいう“取った分取られる”やり方は徐々に淘汰されていく。
今大会の決勝トーナメントもそう。ニュージーランドvsアルゼンチン戦以外すべて30点以内の勝負だったことを踏まえても、点を取り合うスタイルは限界が近づいている気がします。
ちなみにこれらの展望が外れても知ったこっちゃないです笑