日本がイングランドに完敗したけど今までで一番よかった。ようやく超速ラグビーのスタートラインに? エディー・ジョーンズ解任か否かは時間との勝負【2024.11.24感想】

日本がイングランドに完敗したけど今までで一番よかった。ようやく超速ラグビーのスタートラインに? エディー・ジョーンズ解任か否かは時間との勝負【2024.11.24感想】

日本代表の2024年ラストマッチ、英・トッテナムで行われたイングランド戦は14-59で敗戦。これでエディー・ジョーンズHCの復帰1年目は4勝7敗となりました。


例によって格上に大敗する“いつもの”姿を見せてしまったわけですが、そろそろ各所からエディー解任論が聞こえ始めています。
 
目標に掲げる“超速ラグビー”の進歩が見えないこと、何より負け方がよくないことで関係者? 識者? からもエディー体制への疑問符が掲げられています。


なお、僕は諸々の評価を見聞きした上で試合を視聴しました。
それを踏まえて感想を言っていきたいと思います。
 

代表の苦戦に驚きはないけど、フランス戦での負け方はちょっとマズいと思った

まず僕はエディー再登板には当初から懐疑的でした。
理由は何度も言っているので省きますが、正直代表の苦戦にそこまで驚きはありません。

ただ、フランス戦のあの負け方はちょっとマズい。
 
“超速ラグビー”がチームに馴染む気配が一向に感じられない。
それどころか相手に対策され始めている。
 
自分たちが“超速”をマスターするよりも各国の対策が先行している。
おいおい、これはシャレになってないぞ? と。
 
日本12-52フランス。前半20分を乗り切れば日本は怖くない。“超速”の弱点がフランスにバレてた? フィジカルバトルというより対策された気が…
 
冗談抜きでエディーを解任するなら今しかない、今の体制でいくならもう少し工夫がほしい。
「我慢の時期」などと悠長なことを言っている場合ではない印象を受けました。


 

イングランド戦は案外悪くなかった。後半にあの形でトライを取れたのは大きい

試合を観た感想ですが、案外悪くなかったです。
 
SNS上には「絶望した」「エディーを解任すべき」という声が溢れ、最初に挙げたようにラグビー関係者からも後ろ向きな意見が聞かれました。
 
なので「相当酷かったんだろうな」と覚悟して観たところ、おや? そうでもないぞ? と笑
むしろ今までで一番よかったというか、“超速ラグビー”の完成型がうっすら見えた感じがしました。
 
 
恐らく今回のイングランドはティア1の中ではそこまで強くない。
フランスやニュージーランドに比べて付け入る隙(特にディフェンス面)はあったと思います。
そのイングランドに大敗した事実はやはり重い。
 
日本19-64ニュージーランド。オールブラックスと同じ土俵で勝負して勝つのは難しい。“超速”ラグビーで失うものがデカすぎる気が…
 
それでも2つのトライはいい取り方だったし、「最初の20分をがんばる→すぐにグダグダになって防戦一方に」というパターンからの脱却も見られました。
 
特に後半22分の細かいパス回しからのトライは素晴らしい。
今まではバテバテだった時間帯にああいうトライができたことはポジティブです。
 

パスミス、ハンドリングミスが減った。これまでは超速にとらわれて早々にガス欠に陥ってたけど

僕がよかったと思う一番の要因は無駄なパスミス、ハンドリングミスが減ったこと。
 
これまでは“超速”を意識するあまり急がなくてもいい場面で焦ってボールを落としたり、ちゃんと掴めていない状態でパスを出して暴投したりと「え? 何それ?」と思うプレーが目立っていました。
 
自陣でのタッチキックが超速である必要はまったくない。
パスを出す前にまずはちゃんとボールを掴もうぜ。
自陣22m内でのスローフォワードなど絶対にやっちゃダメでしょ。
 
超速にとらわれるあまり不毛なミスを重ね、前半で体力を消耗してガス欠を起こす。
 
超速を80分間継続するなどまず不可能。
ペースアップする場面と抜く場面のメリハリをつけるのが最優先じゃないっすか?


 

動きを抑えたSH。目指す形との乖離が大きくうまくいかなかったのが…

それに比べてこの試合ではチーム全体に落ち着きが見られました。
 
何よりSHが適度に動きを抑えていたのが大きい。
 
恐らくエディーの考える超速ラグビーではSHがキモになります。
ボールを持ったSHがスペースを見つけ、そこにパスを出すor自分で走り込む。もしくは相手を引きつけてスペースをこじ開ける。
 
相手の陣形が整う前にどう動くかの判断を下す、極力コンタクトを少なくディフェンスを置き去りにするのが目指すスタイルなのだと思います。
 
そして最終的な理想はポジションレス
密集近くのプレイヤーが瞬時にSH、SOの役割を担う、周りもその意図を理解していっせいに仕掛ける。
誰もが攻撃の起点になれる&決定力のあるプレーヤーになるのが完成型なのだろうと。
 
ただ、そこに至るのは一筋縄ではいかないので、当面の目標としてSHに裁量を与えていると想像します。
 
 
ですが、今の日本はそれすらもうまくいっていない。
ちょこまかと動くSHに周りが反応できない、焦ってパスを出すせいでボールが手につかない。
結果、勝負どころでポロポロ→地域を挽回されてやり直し→心身が削られる悪循環に陥っていました。
 
今回はその部分での改善が見られたのがよかったと申し上げています。
 

後半まで動きを落とさずトライを取れたのはよかった。ようやく超速ラグビーのスタートライン?

FWが当たって1、2歩前に出る。
SHはまずラインを確認、ボールを“ちゃんと”掴んでから放る。
自陣22mm内では落ち着いてパスを回す、確実にタッチを蹴る。
BKは深くラインを引いて勢いよく走り込む。
 
そして勝負どころでペースを上げ、全員でトライを目指す。
 
今回SHが自分で走り込むシーンはほとんどなく、むしろオフェンスとしてはオーソドックスだった印象。
“超速”の要素は目減りしましたが、その分効率はアップしています。
さらに後半になっても動きを落とさず細かいパス回しでトライまでこぎ着けました。
 
これでようやく地固めができたというか、ここから各自の判断スピード、意思の疎通と精度を高める段階に進める。
初めて超速ラグビーのスタートラインに立ったのだと思います。
 

ディフェンスは抜かれ方、走られ方からチームとしての練習不足かな

ディフェンス面に関しては、はっきり言って練習が足りていない気がします。
 
もちろん代表に選ばれる選手なので各々の能力は高い。
よく言われるフィジカルやタックル技術は高いレベルで兼ね備えているはず。
 
それよりもチームとしての形ができていない。
トライの取られ方、走られ方、抜かれ方を観ると「この場合はこう動く」「誰々があっちに行ったら自分はこっち」という決めごとが固まっていない感じです。
 
“超速”にとらわれてオフェンスに体力を使い過ぎていたのも×。
そこについても今回をきっかけに徐々に改善していくと予想します。
 

今後は時間との勝負。超速が形になるのが先か、エディー解任が先か

今後は時間との競争になりそうですよね。
 
申し上げたように日本の“超速ラグビー”はようやくスタート地点に立ったところ。
SHが動きながらパスorランを選択する自在なオフェンスにはまだまだほど遠いし、理想とするポジションレスのラグビーははるか先にある。
エディー本人が言うようにこの戦術は成熟にめちゃくちゃ時間がかかります。
 
ですが、現実的には今すぐ結果がほしい。すでに解任論も出るなどタイムリミットは近いと想像します。

  • 戦術の中心となるSH、SOの発掘
  • チーム全体での判断の早さ、疎通
  • 80分を通したペース配分
  • ディフェンスシステムの確立

これらの課題を来年までにある程度解消し、ティア1の強豪とも勝負できるチームにしなくてはならない。
代表活動が制限されるシーズン中に。
 
「目先の結果よりも先を見据えたチーム作りを」という主張もわかりますが、ああいう試合を繰り返していれば間違いなくファンは離れていきます。


エディー・ジョーンズ、マジで正念場ですね。