オールブラックスがワラビーズに39-37で逆転勝利。ブレディスローカップ第1戦を制す【ザ・ラグビーチャンピオンシップ第5節感想】

オールブラックスがワラビーズに39-37で逆転勝利。ブレディスローカップ第1戦を制す【ザ・ラグビーチャンピオンシップ第5節感想】

2022年9月15日(日本時間16日)にオーストラリア・メルボルンでラグビー南半球4か国対抗戦、ザ・ラグビーチャンピオンシップ第5節ニュージーランドvsオーストラリア戦が行われ、39-37でニュージーランドが勝利。20年連続でブレディスローカップ保持を決めています。


前節でアルゼンチンにリベンジを果たしたオールブラックスが大荒れの試合の末に宿敵ワラビーズに逆転勝利を挙げたわけですが……。
 
ちなみに試合前の僕の素人予想はオールブラックスの快勝。前回のロス・プーマス戦の出来を考えると、この試合もダブルスコアくらいで勝つのではないかと思っていた次第です。
 
ところが結果は壮絶なシーソーゲームの末にオールブラックスの辛勝という。
思った以上の大接戦に興奮しまくったわけですが、今回はこの試合の感想を言っていくことにします。
 
オールブラックスがオーストラリアに圧勝して「ザ・ラグビーチャンピオンシップ2022」優勝。毎回2戦目で立て直してくるところが王者よね。「普通にやれば」勝てる相手だった
 

ニュージーランドとオーストラリアの宿敵っぷりを目の当たりに。異様な空気感で普通が普通でなくなる

試合を観た感想としては、この両チームはマジで宿敵同士なんだなぁと。
 
僕自身“ブレディスローカップ”なる呼び名は聞いたことがありましたが、ここまで熱狂的なものだとは知らず。
会場の異様な盛り上がりやそこら中で頻発する小競り合い、その他。単なる対抗戦以上の重みを持つ試合だというのを今回初めて知りました。
 
殺気まみれのタックルや対抗意識を隠そうともしない強引な突進、感情むき出しで罵り合う光景などなど。明らかに普通ではない両チームの様子はサッカーでいえば日韓戦やバルサとレアルによるエル・クラシコ、野球でいえば巨人vs阪神の伝統の一戦と似た空気感なのかもしれません。
 
また、「え? これがシンビン?」というジャッジや「今のは反則じゃないの?」というプレーがサラッと流されたり。ああいうトンデモ判定が飛び出すのも会場の殺伐とした雰囲気によるものなのだろうと。
 
申し上げたように僕の予想はオールブラックスの快勝でしたが、蓋を開けてみればまったくそうはならず。高揚した精神状態では“普通のプレー”があっという間に普通ではなくなることを思い知らされた80分間でした。
 

オールブラックスは調子は悪くないけどいまいち噛み合わない。ワラビーズの気合い十分のディフェンス

オールブラックスは前節のロス・プーマス戦から調子を上げてきている印象ですが、この試合でもその片鱗を見せます。
 
ニュージーランドがアルゼンチンにリベンジ。計7トライ、53-3の快勝で前節の借りを返す
 
ワラビーズのディフェンスはスピーディに詰めるというより外に流す“待ち”の傾向が強く、その分オールブラックスが得意とする縦横無尽なパス回しがしやすい。
特に開始直後はフォロワーが次々にギャップに走り込む→そこにパスをポンポン通す展開ラグビーができていました。
 
一方で接点の部分ではやや押され気味で、ここぞの場面でボールを奪われるシーンもちらほら。
序盤は気合いが空回りしているのもあったと思いますが、得点を重ねながらもいまいち噛み合わない印象でした。
 
それでも開始10分ちょいで1トライ1ゴール+PG1本で10-0としたのは大きい。
「お、このままオールブラックスが波に乗るか?」と思っていたのですが……。
 
そこから2度のターンオーバーで立て続けにチャンスを潰したのが痛かった。
 
 
ワラビーズは相変わらずラインアウトがうまくいかず、ディフェンスではそのつど芯をずらされて簡単に裏に出られてしまう。
ただ、ピンチの局面でも失わない思い切りのよさ、躊躇のないタックルによってオールブラックスのミスを誘い追加点を許しません。
 
 
純粋な戦力、個々の能力ではオールブラックスの方が上。
ですが、この日のワラビーズには戦力差をチャラにする意気込みと粘りがあったように思います。
 
TMOでトライを取り消された直後の縦突進とか、マジですごかったですからね。
相手に流れがいきそうになるたびにああいいうプレーで味方を鼓舞するメンタルはさすが。これも一つのホームアドバンテージと言えるのかもしれません。
 
 
あとはまあ、オールブラックスのディフェンスは深いラインを引いてポンポン回されるとどうしても後手に回るってのもありそうですよね。
 

バーナード・フォーリーのうまさ。世界トップクラスの選手が多数所属する日本のリーグはすごいよね

そして、バーナード・フォーリーはやっぱりすごい。
所属するクボタスピーアズでもそうですが、この人はディフェンスのギャップをついたり瞬時にスペースを見つけたりといったプレーがめちゃくちゃうまい。
 
ディフェンスに絡まれながら裏に出て“ホイッ”とパスを通す。
全力で走りながら外側の味方にキックパスを取らせる。
 
今回が久しぶりの代表復帰だったとのことですが、え? 何で?
 
WOWOWの解説も称賛していましたが、視野の広さと絶妙なタイミングで味方を使うセンスは頭一つ抜けている印象です。
 
マジな話、このレベルの選手が当たり前に日本でプレーしているという事実はもっと報道されていいと思います。
日本のリーグには世界トップクラスの選手が山ほど所属していることを大々的にアピールすれば、さらなる集客、人気アップにつながりそうな気が……。
 
 
シンビン覚悟のタックルでオールブラックスの猛攻を防ぎ、バーナード・フォーリーのパススキルを活かしたオフェンスでギャップを突く。
申し上げたようにワラビーズは選手個々の能力ではオールブラックスに劣りますが、この試合にかける思いの強さでは上回っていたのではないでしょうか。
 

オールブラックスは快勝しなきゃダメな試合だった。数的優位の時間帯に得点が伸びなかったのが…

それでも今回はオールブラックスが快勝しなければダメな試合だったと思っています。
 
前半終了間際から後半開始直後までワラビーズはシンビンによって2人少ない状態が続きました。
その間、オールブラックスとしては普通にオープンに回すだけで数的優位が作れる。実況が言っていた通りのやりたい放題というヤツです。
 
ところがその時間帯に挙げた得点は1トライ1ゴールのみ。
それどころか密集での反則によってPGを献上、逆に4点差に迫られてしまうという。
 
あそこで1トライでも取れていれば一気に流れを引き寄せられただろうし、直後のボーデン・バレットのキャッチミスでチャンスを潰すこともなかった。
ワラビーズのプレッシャーがキツかったのもあると思いますが、あれだけ押しまくった中で得点が伸びなかったのは本当に痛かった。
 

18点リードを追いつかれるのはあり得ない。ジョーディのキックパスはいらなかった気が…

もっと言うと、31-13と18点リードの局面から追いつかれるのはちょっとあり得ない。
 
50分過ぎにワラビーズのシンビンによって再び数的優位が生まれ、WTBウィル・ジョーダンの独走トライで追加点を挙げる。この時点でセーフティリードとも思える18点差がつきます。
 
そこからオールブラックスは自陣だろうがお構いなしでラン攻撃を仕掛けていくわけですが、これがよろしくなかった。
 
特に59分過ぎのFBジョーディ・バレットのキックパス。WTBケイレブ・クラークがドンピシャでキャッチするのですが、その直後にペナルティでチャンスを潰してしまいます。
 
瞬時にスペースを見つける視野の広さ、判断力、正確なキックと見どころ満載のプレーではありましたが、あれによってケイレブ・クラークが孤立したことも確か。
 
数的優位の状況を考えれば自陣からのパス回しはいいとして、ボールを手から放してはいけなかった気が……。
 
 
実際、あそこで流れがプツンと切れましたからね。
あのペナルティ以降、あれよあれよという間に点を詰められ一時は2点のリードを許すという。
 
18点差がついたことで余裕が出たのだと想像しますが、はっきり言って今のオールブラックスはそんなことをしていいチームじゃない。舐め腐った真似をするとロクなことにならない典型的なパターンと言えそうです。
 
ニュージーランドvsアルゼンチン感想。ロスプーマスのダブルタックルが秀逸
 
終了間際の逆転トライは文句なしにすごかったですが、それ以前にオールブラックスにとっては完全に勝ちゲームでしたからね。
 
仮にあのまま負けていたら、僕はジョーディ・バレットの舐めプにブチ切れていたところでございます笑


ちなみに勝負を決めたバーナード・フォーリーの遅延行為、直前に後ろにいたチームメートが「早く蹴れ!!」と再三叫んでるんですね。
モーションに入ってから笛を吹かれるのはちょっとかわいそうだなと思いましたが、改めて確認すると案外適切だったのかもしれません。
 
と言いつつ、なかなかアレなレフェリングも多かったですが。