ニュージーランドがアルゼンチンにリベンジ。計7トライ、53-3の快勝で前節の借りを返す【ザ・ラグビーチャンピオンシップ第4節感想】

ニュージーランドがアルゼンチンにリベンジ。計7トライ、53-3の快勝で前節の借りを返す【ザ・ラグビーチャンピオンシップ第4節感想】

ラグビー南半球4か国対抗戦、ザ・ラグビーチャンピオンシップの第4節、ニュージーランドvsアルゼンチン戦が2022年9月3日にニュージーランドのワイカト・スタジアムで行われ、計7トライを挙げたニュージーランドが53対3で勝利。見事第3節のリベンジを果たしました。


8月27日の第3節では25-18でロス・プーマスに敗れ、まさかのホーム3連敗を喫したオールブラックス。
 
ですが、この日は序盤から精度の高いプレーでロス・プーマスを圧倒、前半を24-3で折り返します。
さらに後半に入っても動きを落とすことなく、全局面でロス・プーマスを上回り計7トライ53得点でリベンジに成功しています。
 
 
これで4チームすべてが2勝2敗となり勝ち点差でニュージーランドが首位に。逆に首位のアルゼンチンが4位に転落するなど、混戦状態のまま第5節を迎えることになります。


 

最強のオールブラックスが帰ってきた。この短期間で立て直してくる修正能力はさすが

前節でロス・プーマスの堅いディフェンスを崩せず25-18で敗れたオールブラックス。
ところが9月3日の第4節では雨天の試合ながらもこれまでとは打って変わって圧倒的な強さでリベンジを果たしました。
 
僕もこの試合をWOWOWのアーカイブで視聴したのですが、いや~、すごかったですね
強いオールブラックスが戻ってきたというか、前回からの立て直しは見事としか言いようがありません。
 
先日の南アフリカ戦でもそうですが、初戦の苦戦からあっという間に修正してくるところはさすがのオールブラックス。
 
それこそ今回に関しては別チームと言ってもいいくらいの変わりようです。
この短期間でここまで変わるかと思いつつ、ひたすらオールブラックスの最強っぷりを眺めておりました笑
 

一番変わったのはオフェンスかな。アルゼンチンの機能的なタックルに対抗するために複数人での近場の攻撃を徹底

オールブラックスが前回に比べて何が一番変わったかというと、やはりオフェンス面だと思います。
 
下記でも申し上げたように前の試合では1人目が下に入り、2人目がボールに絡むアルゼンチンのディフェンスに阻まれ最後まで流れを作ることができませんでした。
 
ニュージーランドvsアルゼンチン感想。ロスプーマスのダブルタックルが秀逸
 
ボールを持った瞬間にバババーッと囲まれて戸惑うオールブラックスの選手の姿が非常に印象的だったというか。
 
 
ところがこの試合ではアルゼンチンのディフェンスに対抗するために複数人での突進を徹底します。
 
ボールを持った選手は必ずフォローを引き連れて当たる。
パスを受ける際もフォロワーが素早く密集に入れるように極力近い位置を走る。
 
アルゼンチンも前回同様低いタックルで勢いを殺しにいくのですが、2人目が絡むよりも先にニュージーランドのフォローが入るためにボール出しを遅らせることができない。
 
さらにこの日のニュージーランドはフェーズを重ねても無理せず近い位置で勝負する意識が高く、そのため数的不利の状況がほとんどなかったように思います。
 
各選手が空いたスペースに次々顔を出す従来のオールブラックスとは少し違いますが、とにかくチームとしての一体感がすごい。前節の苦戦を踏まえた上での一貫性が感じられました。
 

ディフェンス面ではアルゼンチンのお株を奪う堅守。ボールキャリアをあっという間に囲んで球出しを遅らせる

また、ディフェンス面ではアルゼンチンのお株を奪う堅守を見せました。
 
近場ではボールキャリアを複数人で囲み、上から絡むことでボール出しをワンテンポ遅らせる。
 
僕の中でのニュージーランドのディフェンスは「素早く詰めてスペースを潰す→相手の進路をふさいだ状態で待ち受ける」イメージ。
南アフリカや日本のように低く刺さるタックルではなくアルゼンチンのように1人目と2人目の役割がきっちりしているわけでもない。
 
なるべく早めにスペースを潰し、どっしりと待ち構えて相手を懐に呼び込む。
サイズとフィジカルを全面に出したディフェンスを基本軸として、さらにこの試合ではボールキャリアを複数人で取り囲むことを徹底していたように思います。
 
 
マジな話、ボールを持った途端に黒づくめの大男数人に囲まれるとか、単なるホラーでしかない笑
 

基本に立ち返ることで拮抗した試合を勝ち切る。苦戦しつつも徐々に完成度を高めるオールブラックスも嫌いじゃない

これまでのオールブラックスはどちらかと言えば個の能力に依存した試合運びが中心でしたが、ここ数年の加速度的な競技レベルのアップによってそれが難しくなりつつあります。
 
そこを打ち破るために
・オフェンスは近場で確実に
・集散を早く、ボールキャリアは極力フォローを引き連れて当たる
といった基本に立ち返っている印象です。
 
 
圧倒的な強さを誇った以前のオールブラックスも好きですが、苦労しつつも情報収集&チーム戦略によって完成度を高めていく今のオールブラックスも嫌いじゃない笑
 
前回「今のオールブラックスは四天王(最弱)みたいな立ち位置」だと申し上げましたが、謹んで訂正申し上げます笑
こういう勝ち方ができるのであれば、再び世界一に躍り出る日も近そうです。
 

アルゼンチンはどうしようもなかった。後半10分あたりは割といい感じだったけど

敗れたアルゼンチンですが、今回はちょっとどうしようもなかったですね。
 
僕は前回の試合を観て「このチームはムラっけが強い」「調子のいいときはめちゃくちゃ強いが、一度崩れると立て直すのが難しいチーム」という印象を受けたのですが、確かにそんな感じなのかもしれません。
 
前半にいきなりPGで先制されたのもそうだし、雨のせいで? ハンドリングミスが重なったのも痛かった。
前回はニュージーランドがセットプレーで自滅してくれた部分もありましたが、この試合ではそういった綻びはほとんどなく。
 
 
ただ、後半10~15分あたりはいい流れになりつつあったんですよね。
前節同様、接点でボールに絡んでニュージーランドの球出しを遅らせる→ターンオーバーでチャンスを作る。
ディフェンスのギャップをついて裏に出たり、タックルのヒットで押し返したり。あの時間帯に1トライでも取れていればまた違った展開になったのかなぁと。
 

「絶対疲れるだろ」という戦術でも運動量が落ちない。あの無尽蔵のスタミナがオールブラックスの強さ?

それでもこの日のオールブラックスは最後まで運動量が落ちませんでした。
 
アルゼンチンのディフェンスが機能しそうになるとすぐさまショートパントでの空中戦に切り替え、早めのプレッシャーでボールを奪い返す。
逆にアルゼンチンは下がりながらのプレーを強いられ徐々に疲弊していきます。で、大事な局面で反則を重ね、掴みかけた流れを手放してしまいました。
 
 
あれだけフォローを徹底し、ショートパントで走りまくり、裏に出られてもあきらめずに追いつきながらもバテた様子をいっさい見せない。オールブラックスのこのスタミナはちょっととんでもない。
 
南アフリカとの2戦目でも思ったのですが、「これは疲れるでしょ」という戦術でもまったく動じる気配がない体力はマジで理解不能。


もしかしたらあの無尽蔵のスタミナこそが2022年版オールブラックスの強さなのかもしれませんね。