2022年8月27日にクライストチャーチのオレンジセオリースタジアムで行われたラグビー南半球4か国対抗戦、ザ・ラグビーチャンピオンシップ第3節。
ニュージーランド代表“オールブラックス”とアルゼンチン代表“ロス・プーマス”の一戦は25-18でアルゼンチンが勝利。ロス・プーマスがアウェイでオールブラックスに初勝利を挙げる歴史的な1日となりました。
アルゼンチンがオールブラックス破る 敵地で初の金星https://t.co/0XX7uNEFbm
— AFPBB News (@afpbbcom) August 28, 2022
WOWOWで中継されているラグビー南半球4か国対抗戦をちょくちょく観ているのですが、今回はニュージーランドvsアルゼンチン戦の感想を。それも9月3日の第4節ではなく8月27日の第3節についてでございます。
先日の南アフリカ戦では1勝1敗と苦戦を強いられたオールブラックスですが、今回は前節でオーストラリアに快勝したアルゼンチンをホームに迎えての一戦。負ければ史上初のホーム3連敗という崖っぷちの試合です。
南アフリカとの2戦目でオールブラックスが見せた底力には心底感動しましたが、あの試合の再現を期待しつつ視聴をスタートします。
#RSAvNZL
南ア23-35NZブレークダウンでのファイトを諦めてまで遮二無二勝ちにきたオールブラックスと、爆発力と統率力でひっくり返したスプリングボクス。
そして最後の最後にFWのガチンコ勝負で押しきったオールブラックス。
すごい試合、感動しました。
NZは王者のメンタルを取り戻しましたね。— 玉川ジャンキーズ (@Junkiesrugby) August 13, 2022
目次
オールブラックスは調子自体はよかった。キワの部分で精彩を欠いたのが痛かったかな
申し上げたように試合は25-18でロス・プーマスが勝利。
前半11分にトライを許すもWTBエミリアノ・ボフェリがPG4本、コンバージョン1本、計5本のゴールキックを決める活躍で手堅く得点を重ねて大金星を挙げています。
とは言え、オールブラックスも調子自体はよかったように思います。
ボールキープもできていたしタックルも機能していた。
スペースのある位置での自在なパス回しやチャンスで畳みかける爆発力、その他。
10-26で敗れた8月7日のスプリングボクス戦では早めのプレッシャーで露骨な糞詰まりを起こしましたが、今回はそこまでではなく。オールブラックスらしいプレーは随所に見られました。
ただ、前半1本目のPGを外したこと、マイボールのラインアウトを支配できなかったこと、ハイパントなどのキック処理で手間取ったことなど、キワの部分で精彩を欠いた印象です。
それでも南アフリカ戦ほどの手詰まり感はない。
首脳陣の人事どころか、いくらでも立て直しが可能なパフォーマンスに感じました(僕は)。
アルゼンチンはすごかった。接点での決めごとを徹底してペースを引き寄せる
勝利したロス・プーマスですが、こちらははっきり言ってすごかったです。
申し上げたようにアルゼンチンには南アフリカのようなスピーディな詰め、低いタックルがあるわけではない。
パッと見「これ、そんなにすごいか?」と思うくらい“普通”のディフェンスです。
ところがニュージーランドがいくら攻めてもギャップが生まれない、どれだけフェーズを重ねても抜ける気配がないまま時間だけが過ぎていきます。
僕も「何で抜けないの?」と思いながら眺めていたのですが、改めて観察してみると接点での対応がめちゃくちゃ機能的であることに気づきます。
ボールキャリアに対して基本的にタックルは2人。
1人目が低く入って勢いを止め、2人目が上に絡んでボール出しを封じる。
文字にすると簡単ですが、実際にやるのはかなり難しいのではないかと。
1人目が飛び出すタイミングを少しでもミスればワンステップでずらされるし、2人目は姿勢が高い分待ちすぎると勢いで押し込まれてしまう。
恐らくこの部分をチームで徹底、反復しているのだと思いますが、今回はそれがモロにハマった感じです。
素早い球出し、パス回しを封じられたオールブラックスはペナルティを重ね、絶好調のエミリアノ・ボフェリにPGを決められる
特別詰めが早いわけではないが、接点での球出しをワンテンポ遅らされる。
おかげでオールブラックスは得意のスピーディな展開をなかなか作れません。
ボールキャリアが絡まれる→ジャッカルにきた選手を人数をかけてはがす流れでどうにかマイボールをキープするものの、ボールが出たときにはすでにアルゼンチンのディフェンスは整っている。
今大会、アルゼンチンのターンオーバー数は4チーム中No.1とのこと。
なるほど確かに。
あのタックルを見せられればランメーターで圧倒していたオールブラックスの得点がちっとも伸びなかったのも納得です。
何度オフェンスを仕掛けてもギャップを作れず、ただただボールを左右に振るだけ。
徐々に疲労と焦燥感が募り、大事な局面でペナルティを犯す。
そして自陣のセットプレーでミスを重ねて絶好調のWTBエミリアノ・ボフェリにPGを決められる。
謎の悪循環というか、調子は悪くないのに勝てる気がしない。オールブラックスにとってはモヤモヤの溜まる試合だったのではないでしょうか。
逆にアルゼンチンは接点の強さ、エミリアノ・ボフェリの好調さに加えて逆転された後も1トライ1ゴール圏内をキープし続けたことが大きかった。
前節ではオーストラリアに1勝1敗、勝っても負けても点差がついていることを考えると、恐らくアルゼンチンはムラっ気が強いチームなのだと思います。
調子に乗れば凄まじい力を発揮するが、一回崩れるとなかなか立て直せない。
そういう意味で今回は完全に“当たり”の日だったのだろうと。
オールブラックスの苦戦になかなか慣れない笑 どれだけ攻略されても個の能力で蹴散らす強さがあったのに
南アフリカのスピーディな詰めと低いタックルで連携を乱され、アルゼンチンの統制の取れたダブルタックルでペースを奪われたニュージーランド。
ホーム3連敗というまさかの事態でランキングも4、5位を行ったり来たりする苦しい状況が続きます。
正直、今のオールブラックスは世界最強とはほど遠い、戦力的には“四天王(最弱)”みたいな立ち位置の印象です。
過去、多くのチームがさまざまな作戦で立ち向かってきたはずですが、そのつど個の能力の高さで跳ね返し続けたのがオールブラックスだったのに……。
接点でこれだけ苦労させられるというのはちょっと意外です。
僕は「強烈な個性と規律を兼ね備えた化け物15人が同じ目標に向かって突き進む」ところにオールブラックスの強さがあると思っていましたが、今は確実にそれが崩れつつある。近年の著しい競技レベルの向上により、個の能力だけでは補いきれなくなっているのかもしれません。
それこそ南アフリカの鋭いタックルに対抗するためにブレークダウンでのファイトを諦め、深いラインと細かいパス回しを徹底したり。
横綱相撲だけでは手に負えない中、なりふり構わず勝ちに行くことでどうにか王者のプライドを守っているというか。
もしかしたら、オールブラックスのラグビーそのものが時代に置いていかれつつあるのかも?
僕の中でのオールブラックスのイメージはコレ↓で止まってるんですよね。
ラグビーワールドカップ2015イングランド大会準決勝でオールブラックスが見せた波状攻撃!!🇳🇿✨ pic.twitter.com/0qzHshpyfR
— ラグビーワールドカップ™ (@rugbyworldcupjp) August 8, 2022
このチームが勝ったり負けたりする状況に慣れるにはもう少し時間がかかりそうです笑