パシフィック・ネーションズ2024の決勝戦、日本vsフィジー戦が9月21日に大阪・花園ラグビー場で行われ、41-17でフィジーが勝利。日本は準優勝となりました。
【ラグビーコラム】フィジーに完敗しPNC準優勝のエディー・ジャパン 〝秋の陣〟は超速ラグビーの重要なマイルストーンhttps://t.co/8fFIzuGNTI #ラグビー日本代表
〝超速ラグビー〟を旗印に掲げる日本代表は、#パシフィック・ネーションズ杯(#PNC)で準優勝となった。
— サンスポ (@SANSPOCOM) September 25, 2024
ちょっと時間が経ってしまったのですが、先日の日本vsアメリカ戦に続いて試合を視聴したので感想を言っていきます。
ちなみに準決勝のサモア戦は所用があったため未視聴でございます。
目次
エディーのラグビーは格下に強く格上に弱い&点の取り合いが基本
以前から申し上げていますが、エディー・ジョーンズのラグビーは格下に強く格上に弱いのが特徴だと思っています。
日本vsイングランド戦展望。厳しい試合になりそう。ロースコアで勝つしかない? 失点を20点以内に抑えて25点くらい取れれば
日本代表の標榜する“超速”に象徴されるように基本はパスとラン中心のスタイル。
グランドを広く使って走り回る自由度の高いラグビーで、ハマれば爆発力を発揮しますがボールを離す機会が多い分ミスも増えやすくなります。
相手ディフェンスの強度が上がれば当然ポロポロも起きやすい。
逆に相手を見下ろせる展開に持ち込めればめちゃくちゃ機能する戦術です。
勝ち試合はボロ勝ち、負ける場合は大差をつけられる。
どちらにしても点の取り合いが前提のスタイルです。
その証拠に2024年の日本代表もジョージア戦以外は必ず40点ゲーム(勝っても負けても)となっています。
前半を同点で折り返した時点で勝つのは難しかった。あと“超速”にとらわれすぎだよね
試合の感想ですが、今回は前半を同点で折り返した時点で勝つのは難しかった気がします。
もともと僕はフィジーは強敵だと思っていて、漠然と「準決勝のサモア戦も苦戦するかも?」と予想していました。
なので、「日本は優勝が最低条件」という意見が一部で見られたのはかなり意外でした。
日本vsアメリカ戦感想。この相手には40点差をつけたかった。超速ラグビー、どうなんでしょうか?
実際、試合が始まってもフィジーの圧力に日本はなかなか流れを掴めません。
“超速”ラグビーがもっとも機能する立ち上がりにいまいち攻めきれない。フィジーの鋭い出足にそのつど接点で糞詰まりを起こされます。
そして何より“超速”にとらわれすぎです。
先日のアメリカ戦でも思いましたが、スピーディなパス回しの意識が意味のない部分にまで伝播している印象。
自陣22mでのタッチキックが“超速”である必要はまったくないし、密集からの球出しも“ちゃんと”握ってからでいい。
地面に転がったボールはまず拾うのが大事。股下からのノールックパスなどすぐ後ろにいるプレイヤーが反応できるわけがありません。
相手に考える隙を与えない、準備が整う前に攻める戦術は結構ですが、そこにとらわれてミスをするケースがあまりに多い。
日本の総ハンドリングエラー26はもはや高温多湿を言い訳にはできないと思います。
前半のディラン・ライリー、後半のマロ・ツイタマのトライを見れば“超速”が機能するシーンは確かにあります。
ただ、それをはるかに超えるリスクと激しい消耗がもれなくセットでついてくる。
現状、費用対効果が合っていないように見えます(誰だ? お前w)。
フィジーのラグビーが日本のやろうとしているスタイルなのでは? 日本とは各局面でのメリハリが違った
逆にフィジーはよかったです。
試合後に知ったのですが、フィジー側も80分走り切ることを目標? に掲げていたとのこと。
ノーサイドの笛とともに多くの選手が仰向けに倒れる光景は「確かに」と思わせるものがありました。
特に感じたのはメリハリです。
ペースを上げる局面と抑える局面の区別。フィジカルや個人技に注目が集まりがちですが、実はチームとしての成熟度にも差があったのではないか。
それこそ日本のやろうとしているのはこれじゃない? というシーンが散見されました。
具体的にはFW陣の集散とBKラインの深さ。
密集に入る人数は最小限、ブレイクダウン直後のムーブに無駄がなく捨てるところは捨てる、行くところは行く判断のよさが目に付きました。
SHに関してもそう。とにかく早く放りたい日本に対してフィジーは「しっかりボールを持つ→味方を見て放る」までの二挙動。当たり前のことを当たり前にやっています。
深く引いたライン、裏を走るランナー。格上のフィジーが“超速”ラグビーのお手本を見せてくれた?
BKラインは最初の立ち位置の深さはもちろん、SHがボールを持つと同時にSOの後ろをランナーが走ります。
このランナーが深い位置から走り込む、または外に展開することで一定のスペースを確保します。
フラットな位置でポンポン放す→3人目あたりで糞詰まりを起こす日本と違い、フィジーは大外の選手が余裕を持ってボールを持つことができます。
ディフェンスのプレッシャーを受けながら大慌てでパスを回す日本。
深くラインを引いてスペースを確保、長いパスと確実性を両立するフィジー。
同じパス&ラン中心のラグビーでもこれだけの違いがあります。
SHが密集からボールを持ち出すも、ランナーと呼吸が合わずに自ら突っ込むシーンがありましたが、それがうまい具合にオプションになっていたのも笑
上述の通り今回のフィジーは「日本のやるべきスタイル」をモロに再現した印象です。
当たり前ですが、80分間をフルスロットルでプレーするなど不可能です。
その中でメリハリのつけ方、抜くところと上げるところの判断、消耗の少ない走り方等、参考になる部分が多かった試合。
格上のフィジーが“超速”ラグビーのお手本を示してくれたのはめちゃくちゃ大きいと思います。